第1回の対談では、プロミュージシャン北川アツトさんが音楽業界での華やかなキャリアの裏側にある“葛藤”と“気づき”を語ってくれました。
「誰かの音楽を支える存在」から、「自分の音楽を発信する存在」へとシフトするにあたって、北川さんの中で大きな転機となったのは、自分自身の“好き”や“違和感”に素直に向き合ったこと。
これは、家具職人でありアンプスタンド開発者でもある藤園の「こうだったらいいのに」という思いが出発点となったものづくりの姿勢と、深く重なります。
音楽もモノづくりも、「表現する」という営みの根底には、自分の心に芽生えた“違和感”や“衝動”がある。
その声に耳を澄ませ、行動に移すことが、プロとして、そしてアーティストとして生きるための第一歩なのかもしれません。
そして今回は第二回の対談をまとめささていただきました。
プロフィール

北川アツト(北川淳人)
1987年1月5日生まれ14歳でエレキベースを手にする。
ユーミン×帝劇『8月31日~夏休み最後の日~』(2012年)、『あなたがいたから私がいた』(2014年)、『朝陽の中で微笑んで』(2017年)においてはベーシストとして抜擢され、松任谷由実のバックバンドをつとめる。そのほかにもSKY-HI、D-LITE(FROM BIGBANG)、Ms.OOJA、クリス・ハートなど、様々なアーティストのライブサポート、レコーディングなど精力的におこなう。エレキベースの他、ウッドベース、シンセベースでの演奏にも定評がある。
ライブサポートにおいてはバンドを取りまとめるバンドマスターとしての手腕も発揮。
【第2回】プロとアーティスト、2つの道の違い 〜 北川アツト × 藤園豊 対談
音楽を生業にするうえで、「プロとして求められる仕事」と「アーティストとしての自己表現」は、時に大きく異なる方向を向きます。
サポートミュージシャンとして第一線で活躍してきた北川さんが感じてきた葛藤と、その中で“やりたい音楽”を見つけていくプロセス。
ものづくりの視点を持つ藤園との対話を通じて、「軸を持つこと」の大切さが浮かび上がってきます。

藤園(以下:F): サポートとソロ、両方の活動をされている中で、それぞれに必要な努力や心構えって違ってくるものですか?
北川(以下:K): はい、かなり違いますね。サポートミュージシャンとして大事なのは、クライアントの期待に応えること。つまり「求められた音を確実に出す」ことが一番大事なんです。ベースの技術もそうだし、譜面を読む力、音作りの柔軟性、あとは人柄とか連絡のやり取りまで、全部ひっくるめて“信頼される存在”であることが求められる。完全に“仕事”なんですよね。
F: サポートって、音楽的な表現というよりも、演奏の確かさとか、場への対応力みたいな側面が強いんですね。
K: そうなんです。もちろん自分のカラーを出すのは悪いことじゃないんですけど、基本的には代替可能な役割。僕じゃなくても他の誰かができる仕事なんです。逆にアーティスト活動は“自分しかできないこと”をやる場所。だからこそ、自分が何をやりたいのかがはっきりしていないと成立しないと思います。
F: 北川さんは、その“自分のやりたい音楽”っていうのをどう定めていったんですか?
K: 僕はブラックミュージックやジャズフュージョンみたいな、ちょっとグルーヴのあるインスト系の音楽が好きなんですよ。で、サポートの現場ではあまりそういう音楽を演奏することって少ない。だったら自分で作るしかないなと思って、ArTactというソロプロジェクトを始めたんです。
F: やっぱり“売れること”とは別のところに軸を置いてる感じですか?
K: そうですね。僕は売れ線とかはあまり意識してなくて、とにかく自分がやりたい音楽を深掘りしていきたい。その方が長く続けられるし、気持ちがブレないんです。
F: それってすごく大切な姿勢ですよね。私も自分でベース弾いていて、“こうだったらいいのに”っていう気づきがきっかけでアンプスタンドを作ったんです。だから“自分がほしいものを作る”という発想にすごく共感します。
K: そうなんですよ。自分が本当に必要としてることを形にしていく。それってアーティスト活動でもプロダクトでも根っこは同じだと思います。最初はそれで3人しかお客さんが来なかったとしても、そこで「じゃあどうすればいいんだろう?」って考え始めればいい。自分の軸があれば、必ず前に進めると思うんです。
F: 最初からお客さんに合わせた音楽を作ると、逆にやりたいことができなくなってしまうこともありますよね。
K: まさにそれなんですよ。最初に“ウケるもの”をやっちゃうと、それをやめられなくなる。僕はそういうジレンマを経験したからこそ、ソロでは最初から“やりたいこと”に振り切ってます。
F: それって本当に強いスタンスだと思います。サポートで培った技術と経験があるからこそ、その選択ができているんだなと感じます。
K: そうですね。だからこそ、サポートもアーティスト活動もどっちが良い悪いではなく、どっちにも意味があると思います。ただ、大事なのは「自分は今、何をしたいか」。そこがぶれなければ、どの道でもしっかり進めると思います。
次回、【第3回】環境が人を変える 〜 成長するために飛び込む勇気 〜 について対談させていただきます。
お楽しみに。
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